漫画『異世界の色彩』ラヴクラフト傑作集 著者:田辺剛。あらすじ、感想、登場人物、用語解説(動植物は写真とイラストで紹介)、他。
隕石が落下したことで、農園を営む穏やかなネイハム一家につぎつぎと悲劇がおこる物語です。
2015年9月26日電子版発行
『異世界の色彩』目次
<目次>
- 第1章 隕石
- 第2章 ある色彩
- 第3章 奇妙な日々
- 第4章 なにか
- 第5章 井戸の中で
- 最終章 荒野
『異世界の色彩』はどんなお話?
- 中編・・・漫画1冊で完結。
- 場所・・・ネイハムの土地で起こる。
- 登場人物・・・主な登場人物アミとネイハム。
- 事件が起きた原因・・・隕石の落下。
- 怪物・・・地球上にない色彩。
- 主人公・・・アミは素朴な若い農夫。ネイハムは穏やかな農夫。
- その他・・・動植物がたくさん登場する。
『異世界の色彩』あらすじ
わたし(測量士)は新しいダムを建設するために予備調査としてニューイングランド地方アーカムにやってきました。
山々に囲まれた緑豊かなところに、”呪われた土地”と噂される場所がありました。
無造作に生い茂る木々を抜けると、谷の底に草木も生えていない灰色の土地がひろがり、そこには枯れた井戸だけがありました。
ダム建設の調査のため町の老人たちにこの地の聞き取り調査をしていると、口をそろえて荒野で暮らしているアミ・ピアース老人には近づかないようにと言われました。
彼は逆に何故アミ老人に会ってはいけないのか不思議に思い、老人をたづねることしました。
アミ老人は測量士から”呪われた”もダム建設の予定地だときくと、40年ほど前にそこに住んでいたネイハム一家の話を語りはじえめました。
1882年6月、ネイハムの果樹園に隕石が落ちました。 アミ・ピアースの農園はネイハムの隣にあっり、ネイハム家族が無事かたずねました。
幸い隕石は家の前の空き地に落下し、ネイハム一家は無事でした。
翌朝、ミスカットニック大学の教授たちが隕石の調査に訪れました。
隕石は落下直後9フィートほどの大きさでしたが、教授たちが来たときは7フィートに縮んでいました。
※9フィート・・・約2.7メートル
※7フィート・・・約2.1メートル
隕石は熱を持っていましたが、柔らかかったため、ひと部分を採取して手桶に入れておきました。
教授たちがアミの家で休息をとっている間、アミの妻は手桶の中の隕石を見ていたところ、隕石が縮んでいることに気がつきました。
教授達は縮んだ隕石を実験室に持ち帰りました。縮んだ隕石は調査した後、入れていた容器ごと燃えたらしく跡形もなく無くなってしまいました。
驚いた教授達は翌日、ふたたびネイハムのところに来ました。
隕石は5フィートぐらいになっていました。(約1.5m)
教授たちは隕石のサンプル採取と中身の確認にとりかかりました。
隕石の中まで掘ってみると、”地球にない色彩”の光る分部があらわれました。その分部を調べるため槌(ハンマー)でたたいてみると、「バキャッ」という音と共に一瞬で消えてしまいました。
教授たちはそのあと、隕石の内部に穴をあけて”地球にない色彩”を探しましたが出てきませんでした。
その日の夜、隕石に雷が6回も落ちた為、隕石は消えて無くなってしまいました。その様子を見ていなネイハムは「隕石が稲妻を呼び寄せていた」といっていました。
隕石の落下から数ヶ月後、ネイハムのりんご園では色艶のよい立派なリンゴが実のりました。
ところが、そのリンゴは味が苦くて食べられず、畑のトマトも同じでした。
ネイハムは土壌が隕石の毒素のせいで汚れたと考えました。
冬になると、ネイハムの家族は町で見られなくなり、教会にも来ていませんでした。
心配したアミはネイハムの家にいくと、庭にいたネイハムが巨大なウサギの足跡を見ていました。
『異世界の色彩』登場人物
わたし 若い男性。アーカムに新しいダム建設の為にやってきた測量士。
アミ・ピアース 老人。物語の語り手。
「奇妙な日々」(アミによって語られる。)
アミ・ピアース 若い頃。アーカムで農園を営む。ネイハムとは幼馴染。
アミの妻
ヒーロー アミの馬。
ネイハム・ガートナー 男性。アーカムで果樹園を営む。温和で誠実。
ナジー ネイハムの妻
マーウィン 3歳。男の子。
ゼナス 長男。控えめな性格。
サデュース 次男。快活な性格。
町人の息子たち ネイハムの農園近くで見たこともない獣を見た。
スティーブン・ライス ネイハムの農場の近くで色も形も変わってしまったザゼン草を発見する。
ボストンの商人 ネイハムの住む場所いったいが蛍光を放っているのを目撃する。
落下した隕石について
- 熱してもガスを発生しない。
- 不揮発生を保つ(気体にならない)
- 暗闇でかすかに発光。
- 熱をもっている。
- 分光器スペクトルで調べると”地球にない色彩”があった。
- 柔らかい。
- 隕石内部に”地球にない色彩゛の球体があった(消えた)。
- 自然に縮小していく。
- 稲妻を引き寄せる。
- ウッドメンステッテン(ウッドマンステッテン)斑紋がかすかにある。
ウィドマンシュテッテン構造は、鉄とニッケルを多量に含むオクタヘドライト型隕石(八面体晶隕鉄)においてみられる特有の構造のことである。
『ウッドマンステッテン構造』Wikipediaより
『異世界の色彩』用語解説
分光器 光の電磁波スペクトルを測定する機器。
スペクトル 光を分光器(プリズム)で分解することで、光が波長の順番に並んで現れます(例:虹)。この光の帯のこと。
マーモット アメリカ、カナダにウッドチャックという種類のマーモットが生息している。
ザゼン草(ザゼンソウ) 北アメリカ東部、カナダ、北東アジア、日本に生息している。
ユキノシタ(アメリカユキノシタ)
北アメリカ東部原産。草丈1mぐらいになる多年草(数年生きる)。
モフクチョウ (不明)
モフクチョウと呼ばれていたので黒い蝶かと推測しますが、どの蝶を差しているのか不明です。
『異世界の色彩』感想
未知の隕石が落下したことで、次々に怪奇現象が起こり、家族に悲劇が起こるお話しでした。
隕石が落ちた敷地で事件がおきるので、他の作品のように色んな地名がでてこなくて分かりやすいと思いました。
隕石から怪物がでてくる分けではなく、不可思議な出来事がつづき、だんだんエスカレートしていくお話です。
「地球上にない色彩」をはじめに見たのは隕石の中でしたが、それが花に見られるようになり、ネイハムの土地が「地球上にない色彩」で発光しはじめます。
それだけなら、まだましでネイハム一家に異変がおきはじめます。
それでも、ネイハムはこの土地を離れようとはしませんでした。
住み慣れた土地を離れるのは、難しかったのか。
それでも、農業を営む穏やかな家族に残酷なできごとが起こるのは、可愛そうで、やりきれない気持ちになりました。
最後、「地球上にない色彩」が飛び出してくる場面は、迫力がありました。
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