漫画【インスマスの影】あらすじ、感想、マーシュ家家系図、他

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漫画で読むラブクラフト傑作集【インスマスの影】著書 田辺剛。1巻と2巻(完結)のあらすじ、感想、マーシュ家家系図、インスマスの歴史、インスマスの場所(考察)を紹介しています。

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『インスマスの影』1,2の目次 紹介

1,2巻 2021年5月12日発行

<1巻 目次>

  • 第一章 ニューベリーボートにて
  • 第ニ章 ダゴン秘密教団
  • 第三章 インスマス面
  • 第四章 ダドック・アレン
  • 第五章 ダゴンの誓い

※第三章の「インスマス面(づら)」はインスマスの顔つき、見た目を差します。

<2巻 目次>

  • 第六章 ギルマン・ハウス
  • 第七章 侵入者
  • 第八章 悪魔の岩礁
  • 第九章 悪夢
  • 第十章 インスマスの血
  • 最終章 深きものども

『インスマスの影』あらすじ

主人公の青年は自らの家系図をつくるために母方の出身地アーカムへ行く途中、ニューイングランド地方の周遊を楽しんでいました。

※ニューイングランド地方・・・アメリカ北東部のメイン州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、ロード・アイランド州、コネチカット州です。

※画像をクリックすると拡大します。

1927年7月14日 アメリカ合衆国、マサチューセッツ州ニューベリーポートの観光をすませ、母親の出身地であるアーカム(マサチューセッツ州)へ向かうことにしました。

青年は蒸気機関車で行こうとしましたが、切符代が高いので安いバスで行くことにしました。

そのバスはニューベリーポートからインスマス(町)を経由してアーカムまで行くといいます。

切符売り場の男性は「バスで行くのはおすすめしない」と言いました。それはインスマスのイヤな噂と奇妙な住民たちのせいでした。

町の大金持ちで精錬所の責任者マーシュ老人祖父オーベット・マーシュはその昔、貿易会社を営んでいました。自ら船に乗り各地へおもむいていたオーベットは、悪魔と取引して町に怪物を連れてきたうえ生け贄をささげていたと言います。

インスマスの沖合にある”悪魔の岩礁”と呼ばれる場所には悪魔が巣食っていると。

また、インスマスでは過去に住民の半数が亡くなったことがありました。町で疫病が流行ったためと言うことでしたが原因は不明で暴動も起きていました。

さらに、オーベット・マーシュは、異国人を町に連れてきました。その結果インスマスの町人は異国人との混血でインスマス面(づら)という奇怪な容姿をしていると言います。

青年はインスマスの話しをきき、とても興味を持ちました。そこでインスマスにホテルがあるかたずねると、「ギルマン・ハウス」という安宿があると教えてくれました。

しかし、別の男性が「2,3年前にケイシーという男性が仕事でインスマスのギルマン・ハウスに泊まったとき「奇妙な話声が一晩中きこえ、誰かが自分を見張っていたと言う恐怖を味わい朝1番のバスで逃げ帰ってきた」と言いました。

青年はインスマスで夜を過ごすのは危険だと判断し、午前10時のバスでインスマスに着いたら、夕方8時のバスでアーカムに向かうことにしました。

今夜はニューベリーポートに泊まることにしたので、ニューベリーポート公立図書館とニューベリーポート歴史協会へいき、インスマスについて情報収集しました。

そして、翌日、青年は午前10時のバスに乗りインスマスへ向かいました。

インスマスの町に到着した青年はストアーで町の地図を入手し、町の歴史に詳しい老人ザトック・アレンに会います。

2巻では、夕方8時発 アーカム行のバスに乗ろうとしますが、バスが故障したため翌朝まで出発できないことになり安ホテル ギルマン・ハウスに泊まることになります。

『インスマスの影』登場人物

主人公の青年 (名前は出てきません) オーバリン大学の学生。父と2人暮らし。

<ニューベリーポート>

切符売り場の男性数人の男性。インスマスについて教えてくれた。

ニューベリーポート公立図書館の女性 

ティルトン ニューベリーポート歴史協会の学芸員。インスマスから入手した宝飾品を案内する。

<インスマス>

ジョー・サージェント バスの運転手。(インスマスの住人)

ファーストストアーの若い店員 男性。アーカム出身。イブスウィッチで下宿生活。

ザドック・アレン 96歳の老人。インスマス生まれ。インスマスの歴史に詳しい。酒好き。

ホテル受付の男性 ギルマン・ハウスの受付。

牧師 ”ダゴダン秘密教団”の牧師。

町の人々 インスマス面。

マット・エリオット オーベットの船の一等航海士。フリー・メンソン。

カナカ族 オタハイト島の東にある島の原住民。

ワラキー カナカ族の村長。王家の血を継ぐ。

モウリー理事 インスマスの理事。

<アーカム>

ピーボティー アーカム歴史協会の学芸員。

<主人公の家族>

イライザ・オーン 主人公の祖母。

ダグラス 主人公の叔父。イライザの息子。イライザに似ていた。自殺した。

ウォルター 主人公の叔父。イライザの息子。イライザの夫に似ている。

ローレンス ウォルターの息子。イライザに似ている。入院中。

主人公の父  イライザ・オーンの娘(主人公の母)と結婚した。主人公と2人暮らし。

インスマスの歴史

1643年 町が成立する。

1776年 アメリが独立宣言。 アメリカ独立革命前は製造業で栄えていた。 その後はマニュセット川を動力源とした工業中心地として繁栄する。

1812年 米英戦争。不景気となる。ポリネシアとの貿易で金製品を大量に輸入する。精錬所がつくられ町は繁栄する。

1838年 ポリネシアと貿易が途絶える。金製品で富を得ていた町は打撃をうける。

1840年 ”タゴン秘密教団”が町で勢力をのばしはじめる。

ふたたび金製品が流入しはじめ、町は活気を取り戻した。町に鉄道がひかれる。

1846年 インスマスでは行方不明者が多数出ていた。町の役人が調査を開始する。その結果、オーベット・マーシュと32人の仲間が投獄される。

しばらくすると町に疫病が流行り住人の半数、役人達が亡くなりました。オーベット達は釈放される。※疫病は方便であり本当は”深きものども”が町を襲撃した。

1861年 南北戦争はじまる。

”深きものども”と住人との混血が増え始める。

1865年 南北戦争終戦。人口減る。工場は閉鎖、鉄道も廃線となる。

主要業:漁業、金塊の流通(マーシュ精錬所)

その後も町にやってきた人達の行方不明は続いた。

1927年7月 町に主人公の青年やってくる。

1927年冬~1928年初め 連邦政府が町を秘密調査する。

1928年2月 多数の町人が逮捕され、ダイナマイトによって町は破壊された。

オーベット・マーシュ

マーシュ家は東インドと太平洋の貿易を生業としていた。

オーベット・マーシュも3つの船(コロンビア号、ヘティー号、スマトラ・クイーン号)を所有し自ら現地におもむき商売をしていた。

1812年オタハイト島の東方にある島に住むカナカ族村長ワラキーたちと知り合う。カナカ族は不思議な遺跡と黄金でできた奇妙な模様の装飾品に、大量の魚を採っていた。※オタハイ島は現在のタヒチ。

オーベットはこの島の豊かさとカナカ族の特徴(年寄がいない、若い娘が頻繁に姿を消す)に興味をもち真相をききだした。

そして、カナカ族が行っていた儀式の方法を教えてもらった。

カナカ族から大量の装飾品を入手し精錬業をつくって売りさばいた。

1832年カナカ族との交易が途絶えると、オーベット自らが儀式を行うようになる。その後、大量の貴金属を入手し魚が沢山とれるようになる。

オーベットは巨万の富を築く。(この時3人の娘と1人の息子がいた)

1846年 二人目の妻をめとる。(妻の姿を見たものはいない)3人の娘をもうける。2人は蒸発し、1人はアーカムへ嫁いだ。

1878年 オーベット・マーシュ亡くなる。

マーシュ家 家系図

※画像をクリックすると拡大します。

※「マーシュ家家系図」は漫画「インスマスの影 1,2」と「図解クトゥルフ神話」を参考にしました。

※主人公の名前は漫画「インスマスの影 1,2」では明らかになりませんでした。そのため家系図に名前を入れていません。

『インスマスの影』用語解説

アーカム マサチューセッツ州エセックス群にある町。(架空の町)

インスマス  マサチューセッツ州エセックス群にある港町。地図に載っていない町。ニューベリーポートまたは、アーカムからバスが出ている。(架空の町)

精錬所(せいれんじょ) 鉱石から特定の金属を取り出すことをおこなう業者。

タゴン秘密教団  悪魔崇拝。秘密宗派でインスマスの正統宗派。

※タゴン・・上半身が男性、下半身が魚の姿をした海神。旧約聖書では悪神。クトゥルフ神話では「深きものども」の「父なるタゴン」「母なるヒュドラ」という位置づけ。また、クトゥルフの崇拝者。

”悪魔の岩礁”  インスマスの港から約2.4キロのところにある。悪魔が巣食っていると言う噂。

インスマスの宝飾品  奇妙な形の黄金でできた装飾品。

インスマスの冠   楕円形の頭にかぶる黄金に宝石を散りばめた冠。牧師がかぶる。

オタハイト島の東方にある島   ポリネシアにある。カナカ族が住む。(現在のタヒチ)

カナカ族    島の原住民。黄金の装飾品と漁業でオーベットと取引していた。海に住む神と交配した民族。

”なにか”  ワラキーがオーベットにわたした鉛の様な資材でできた手のひらサイズの物。

「卍」の印  ”古きものども”の印。

フリー・メンソン 16世紀~17世紀イギリスで起きた世界主義的、人道主義的友好団体。

”深きものども”  海底深くに住んでいる。人間の形をしているが魚のような頭と鱗をもった生き物。死なない。”大いなるクトゥルフ”を崇拝している。

イハ=ンスレイ  ”深きものども”が住む海底都市。世界中のいたるところにある。その一つがインスマスの”悪魔の岩礁”の先にある。

ショゴス  ”古のもの(いにしえのもの)”が造った生物。”古のもの”の使役。

テケリ・リ!テケリ・リ! ショゴスの鳴き声。

”古のもの””クトゥルフ”の関係は『狂気の山脈にて』に登場しています。

『大いなるクトゥルフ』

”深きものども”大いなるクトゥルフを崇拝しています。

”ダゴン秘密教団”の呪文です。

イア! イア!

クトゥルフ・フタグン

フングルイ・ムグルウナフ

クトゥルフ・ルルイエ・ウガフナグル・フタグン

引用元『インスマスの影 1』より

インスマスの場所(考察)

※画像をクリックすると拡大します。

インスマスの場所を考察しました。

  • マサチューセッツ州エセックス群にある。
  • 主人公はニューベリーポートからバスでインスマスを経由してアーカムまで行く。
  • インスマスへ向かうバスの中で「ロウリー・グリーン」「パーカー川」「プラム島」を通過している。(ロウリー・グリーンという地名はないがローリー(ロウリー)はある)
  • 作中に「イプスイッチ」という地名が出てくる。
  • 主人公はインスマスからローリーまで歩いている。(歩ける距離と考えられます)
  • イプスイッチの近くに「グレイト・マーシュ・エリア・クリティカル」という自然保護公園がある。(偶然かもしれませんがマーシュ家と同じ名前)
  • 作中インスマスはマニュセット川を挟んで北側、南側に分かれている。(架空の川)
  • 作中インスマスは港町です。
  • ウィキペディア「インスマス」でイプスイッチ河口グレート・ネックあたりを推測している。(作品の場所と照らし合わせてもこの辺りが妥当)

インスマスは架空の町なのではっきりした場所が特定できません。作中の地名も架空の地名と本当にある地名を混ぜて使っています。

あと、「アーカム」も架空の町です。アーカムについては現存するマサチューセッツ州セーレムという町の名前をアーカムと変えて使ったそうです。

上記地図の「アーカム」は「セーレム」の場所です。

『インスマスの影』感想

1巻で主人公がインスマスに興味をもち、町のことを調べ、町を実際に訪問します。

「地図に載っていない町」ときけば、どういうこと?と不思議に思います。

わたしも読みながら「どんな町なんだろう?」と気になりました。

青年が町に興味を惹かれたのは「好奇心」だけでないことが2巻でわかりますが。

インスマスの着いた青年はストラーの感じの良い青年と出会いました。

この青年に地図を書いてもらい、町の歴史に詳しい老人がいることを教えてもらうなど、順調に進んでいきます。

しかし、インスマスの町は建物も朽ち果て、海水の生臭い匂いが充満している所です。

観光に不向きな町だし、住民も気持ちわるいです。読んでいて

なんとなくイヤな予感がしはじめました。

すると幸いにも老人ザドック・アレンと出会い、町に起きたことを聞き出します。

町の秘密を知ってしまった青年が生きてインスマスを出られるのか心配になりました。

物語はまだ静かに進んでいましたが、青年が心配で速くインスマスから出てほしくなりました。

2巻はハラハラ、ドキドキしました。

青年が何故インスマスに惹かれたのか、伏せんが回収されます。

最後のシーンは衝撃的でした。

本当に田辺剛先生の絵が素晴らしくて映画を見ているように漫画が読めました。

海中はとても綺麗です。

グロテスクに描かれている ”深きものども” も見慣れるとかわいく思えてきました。

黒目がちの大きな目は愛嬌があると思います。

海の中を泳ぐシーンもとても気持ちよさそうです。

最後は少しショックでしたが、青年が前向きな気持ちで自分の運命を受け入れていたので、暗い気持ちにはなりませんでした。

今回の”深きものども” がワシャワシャ出て来くるシーンは迫力があって大満足しました。

冠をかぶった牧師も好きでした。

わたしは読んでいてギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人を思い出しました。こちらも大好きな映画です。

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