ラヴクラフト傑作集1。 著者:田辺剛。『神殿』『魔犬』『名もなき都』掲載。あらすじ、感想(一部ネタバレあり)、場所、登場人物など紹介しています。
2014年8月25日電子版発行
『神殿』あらすじ、登場人物、感想、場所
『神殿』はどんなお話?
- 短編・・・65ページの短編。
- 事件は潜水艦で起こる。
- 登場人物・・・主な登場人物5人。
- 怪物・・・登場しない。
- 主人公・・・冷徹な人物。
『神殿』あらすじ
1917年ドイツ帝国海軍少佐カール・ハインリヒが艦長を務める潜水艦 U29で奇妙な出来事がおこります。
U29はイギリスの貨物船ヴィクトリー号を撃沈後、甲板にヴィクトリー号の乗組員の遺体を見つけます。
※甲板(かんぱん)・・船の上部で平たい広い床。
カール艦長は海に投棄するよう命令し、クレンツェ大尉と部下数名で取り掛かりました。
イギリス人は甲板の手すりをしっかり握りしめていました。
部下は気味悪がりながらもイギリス人の手を開き遺体を投棄しようとします。
クレンツェ大尉は部下の手を止めさせ遺体のポケットをあさります。
すると小さな象牙細工をみつけました。
クレンツェ大尉は値打ちものだと自分のポケットにしまいました。
海に投棄された遺体を見ていたた船員ミュラーは、イギリス人が泳いでいるといいました。
クレンツェ大尉はミュラーを相手にしませんでした。
艦内で作業していたボーム(イギリス人を投棄したひとり)が「イギリス人が死者を先導してる」といいはじめました。
また、別の作業をしていたミュラーはイギリス人が死者を先導して泳いでいる姿を目撃します。
恐怖におののくミュラーはクレンツェに象牙細工をイギリス人に返すように迫りますが、カール艦長は彼を監禁してしまいます。
『神殿』登場人物
カール・ハインリヒ 主人公。ドイツ帝国海軍少佐。潜水艦 U29の艦長。冷酷な人物。
クレンツェ大尉 仲間の船員を子馬鹿にしている。
ミュラー 年寄の船員。
ボーム 若い船員。はじめにおかしくなる。
イギリス人 ラテン系の容姿。象牙細工の持ち主。
『神殿』の場所
漫画では瓶が拾われた位置が記載されていませんでした。
そのためwikipediaを参考にしました。
8月20日 – 北緯20度西経35度の地点から手記を入れたビンを放出する。
海底の神殿『ウィキペディア(Wikipedia)』より
北緯45度西経28度(戦艦がイギリス貨物船を撃沈した位置)
北緯20度西経35度(瓶を拾った位置)
『神殿』感想(ネタバレあり)
戦争中の話しなので、はじまりから陰のある画風でした。
カール艦長の絵柄から、冷酷で命令厳守な雰囲気が伝わってきます。
密封された逃げ場のない潜水艦で事件がおきるので、絶望的な気持ちになりました。
カール艦長は、船員たちがおかしくなっていく事に同様することなく、淡々と殺害していきます。
その姿をみて「呪われてるのはカール艦長だ」と思いました。
はじめは、深海の神殿なので”深きものども”もしくは”ルルイエ”と関係あるのかと思いました。
しかし『神殿』の彫刻は人間の姿をしていたので、関係ないと思いました。
カール艦長が「アトランティス」と言っているので、この『神殿』はアトランティスのようです。
ちなみに、第一次世界大戦中、実際にドイツの潜水艦がイギリスの客船を攻撃しています。
次にアメリカを出港した船を撃沈しています。
物語は、これらの史実を元にしたと思われます。
冷徹で鋼のメンタルの持ち主カール艦長を田辺剛先生は絵で表現しています。
目力があって無表情のカール艦長が1番こわかったです。
田辺剛先生は天才だと思いました。
『魔犬』あらすじ、登場人物
『魔犬』はどんなお話?
- 短編・・・61ページの短編。
- 場所・・・イギリスとオランダ。
- 登場人物・・・2人。
- 怪物・・・登場する。
- 主人公・・・背徳な行為に刺激を感じている青年たち。
- テンポ・・・テンポが速い。
『魔犬』あらすじ
イギリス。
主人公の青年と旧友セント・ジョンは古い屋敷に2人で住んでいました。
彼らは恋愛、冒険、学問には興味が持てず、背徳的な行為によってのみ刺激を得る生活を送っていました。
彼らが夢中になっていたのは、墓荒らしでした。(墓をあばいて埋葬品を盗む行為)
ジョンは次のターゲットは、オランダで5世紀前に埋葬された墓泥棒の墓だといいます。
墓泥棒は大きな魔力を秘めた石を盗みだした噂があるといいました。
主人公は興味をもち、2人はオランダにある墓を暴きにむかいました。
墓泥棒は大きな魔力を秘めた石を盗みましたが、巨大な獣に切り裂かれて死にました。
満月の夜、2人が墓泥棒の墓を掘り柩を開くと、ミイラ化した遺体がありました。
遺体には巨大な獣に襲われた跡が生々と残っています。
そして遺体の横には、獣に翼のはえた彫刻品がありました。それは翡翠(ひすい)でした。
2人は翡翠をイギリスに持ち帰りました。
しばらくすると2人は「巨大な獣の影」を見たり、「鳴り響く遠吠え」を聞いたりしました。
さらに巨大な獣が2人の屋敷に現れるのでした。
『魔犬』登場人物
わたし 主人公の青年。
セント・ジョン 主人公の旧友(悪友)。「ネクロノミコン」が愛読書。
墓泥棒 オランダ。5世紀前に埋葬された男。
悪党たち・・・ロッテルダムで1番の悪党ども。
『魔犬』語彙の解説
ネクロノミコン 著者:アブドゥル・アルハズラット。禁断の魔道書。原本はアラビア語。
屍肉食派(しにくしょくは) ネクロノミコンに出てくる霊魂。
屍肉食・・・主に死骸を食べる肉食(動物)。
『魔犬』感想
とてもテンポの良い話しでした。
場所もイギリスとオランダを行き来する上、屋敷、町中など場面も変化に飛んでいます。
青年たちの趣味が「墓荒らし」だったので、始めから何か起こるだろうと緊張しました。
オランダでの墓荒らしのシーンは、迫力がありとても薄気味悪かったです。
その後の魔犬が月に向かって飛んでいくシーンも迫力がありました。
まるで映画のワンシーンを見ているようでした。
話しのテンポが良くて場面が次々に変わるので、長編マンガを読んだように思いました。
あとで『神殿』より数ページ少ないと知り驚きました。
田辺剛先生の絵が素晴らしいです。どの場面も精密に描かれて、まるで映像を見ているようでした。
わたしは魔犬がかわいく思えて好きでした。
『名もなき都』あらすじ、登場人物、感想
『名もなき都』はどんな話?
- 短編・・・31ページの短編。
- 場所・・・クウェート。
- 登場人物・・・1人
- 怪物・・・登場する。
- テンポ・・・普通。
『名もなき都』あらすじ
主人公の男性は『ネクロノミコン』の著者アブドゥル・アルハズラットが夢の中でみた都市へやってきました。
そこは古代エジプトやバビロンよりはるか昔から廃都として存在していました。
そして、アラビア人はこの都に近づくことを恐れていました。
主人公はこの「名もなき都」で冷たい風が吹き出している遺跡に気がつきます。
その冷たい風は日の出と日の入り時刻にだけ、穴から吹いてきました。
彼は遺跡の中を調べて見る事にしました。
遺跡の穴は天井が低く男性は這うようにして奥へと進んでいきました。
5時間ほどかけて奥へ進んでいくと松明は消えてしまいましたが、広い場所にでました。
そこには、磨きあげられた木材と上部はガラスで覆われた四角い無数の箱が綺麗に並べられていました。
そして、その奥の通路から明かりが差していました。
彼は明かりを目指して歩いていきました。
『名もなき都』登場人物
主人公の男性 若い男性。遺跡を調査している。
ラクダ 主人公が乗っているラクダ。
『名もなき都』場所
『図解クトゥルフ神話』を参考にしました。
『名もなき都』感想 (ネタバレあり)
主人公が古くから存在するが「名前のない都」に興味をもち、調査にやってきます。
そこで、その都市をつくった怪物の霊魂に出くわすお話しでした。
漫画は短いながらも、怪物たちが地上に住み支配していたこと、やがて出現した人間を彼らは八つ裂きにしていたことなどが分かります。
怪物は滅んだようですが、死んでも霊魂になって人間を呪っていました。
怪物たちの姿は悪魔みたいでした。(映画に出てくる悪魔の姿に似ている)
怪物たちの現れるシーンは迫力がありました。
また、たっぷり怪物を堪能できて満足しました。
この都市については下記の様に記されています。
かつて海底にあったこの都市は、大いなるクトゥルフとその眷属(けんぞく)を崇拝していた匍匐移動(ほうくいどう)する爬虫人類(はちゅうじんるい)が、1千万年の長きに渡って住処(すみか)としていた古代の文明都市である。
『図解クトゥルフ神話』より
眷属(けんぞく)・・・一族、身内、従者、家来、配偶者。
匍匐移動(ほふくいどう)・・・手足をつかって地面をはうように移動すること。(軍隊の匍匐前進)
『魔犬』まとめ
3作品が掲載されています。
- 『神殿』
- 『魔犬』
- 『名もなき都』
3作品のはなし
- 1話め 深海にあるアトランティスの遺跡を発見する。
- 2話め 魔犬を呼び覚ます。
- 3話め かつて地上を支配していた怪物の霊魂の存在。
3作品の主人公
- 冷酷な人物。
- オカルト好き墓荒らし。
- 遺跡を調査するまじめな人物。
参考文献
- 漫画『魔犬』著者 田辺剛
- 『図解クトゥルフ神話』著者 森瀬繚
- wikipedia
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